自分という車を走らせる
車を運転するときは、「いま、この瞬間」に全集中している。
きちんと行く先をみつめ、信号や歩行者や他の車に注意を払い、それでも、必要以上に周りに目をやることはない。なぜなら、自分の車を安全に運転しなくてはいけないから。
後続車を過剰に気にしたり、しない。通り過ぎた道もしかり。前をみなくちゃ、あぶないもの。
同乗者がいればなおさら神経を払い、ていねいに、揺れすぎないよう、しっかりハンドルを握り、荒くない運転ができているかな、と確認する。
運転をしている「いま」に、私の全存在でもって注意と意識をおいている。
だのになぜ。
ひとたび車から降りて自分の人生ロードを走るときには、同じようにいかないんだろう。
気づいたら、よその車と比べてみたり、通り過ぎた道を何度も何度も、振り返ったりしている。そんなことしていたら、リアルな道路では、事故ってしまうというのに。
日々の営み、生きること、も、やっぱり車の運転中のように、やってみることなんだと、思う。自分という車を、いかに丁寧に、いかに周りに踊らされることなく、いかに振り返りすぎることなく、進行方向に向けて走らせるか、なんだと思う。