「それっていけないことなのかい?」
と、私の前にすわっている、クマが言った。
「そりゃそうよ。いけないに、きまってるわ」
私は少し、語気を強めて答えた。このクマ、やっぱりクマなんだわ。人間世界のことを知らなさすぎる。
「そう思っているのは、キミだけかもしれないよ」
相変わらずのんびりとした口調で、クマが言う。手にもった雨傘を、愛おしげに、なでている。雨なんて降ってもいないのに。
さすがにすこし、苛立ってきた。
「いいわ、それじゃ、こうしましょう。もうひとり、意見を聞こうじゃないの。」
私はそう言ってパッと勢いよく椅子から立ち上がると、廊下に備え付けてある、電話へと向かった。
アリクイだ。アリクイに、聞こう。
私の知り合いの中で、彼ほど不器用な者は、いない。でも、彼はぜったいに、自分にウソをつかない。
電話にでたアリクイは、どうやら寝ていたらしい。しゃがれた声で、やつぎばやに要点を言う私に、2秒おくれの返事をしながら、最後に、こう言った。