もうちょっと、あとほんの、もうちょっとなの。
と、ふっくらしてきた月が言う。
もうちょっと、あともうちょっとだけ、歩こうよ。
舌を出し、身を寄せてくる、犬に言う。
急にやってきたのは、夏真っ盛りの日とホッとするよな夕暮れどき。
虫たちがせっせと、とりもどせ~~、と、鳴いている。
夏の夕暮れは、私の好きなものの一つ。
でも、本当に。本当は。
もうちょっと、あともうちょっとな、気がしている。
どんな時にも、どんな流れに見えても、自分の感覚だけは、ホンモノだ。
好きなものを選び、好きなシーンを探し続けてさえいけば、「今」は決して、捨てたもんじゃぁ、ないと思う。